蒸しても蒸しても真ん中やわらかい
間に合うか人参茹でる芋茹でる
負けてゆく道友よりもはやい道
ドアの外では終わるのを待っている
嫌いにならずにすむ距離春の雪
ドーナツの穴をあけてももういない
どうしてんのなにしてんのと来る列車
ピン落ちるあぶないほうを上にして
背の高い草にあなたは隠れたね
もうおなかいっぱいですとこぼしてる
人だったものがこぼれてくる夜空
いらんもんこぼしてちょうどいいかげん
この傷はなにをこぼした痕だろう
こぼしたものはもらってもいいですか
春の雲 名前のないままで消える
大阪の春は行ったり来たりする
おざぶ敷く一番ぬくい春の上
春が来るわたしが渇き切る前に
あきらめたら楽やあさりの口ぽかん
また起きて見るのは夢でないつづき
監視カメラがわたしに向いてから盗む
私を裏切る父は父として
守られてみたかったなあ目玉焼き
これだけは言わねば追い焚きのボタン
守られぬ身に包帯の色の雪
男らは守らぬように立っている
あなたを忘れてピアスの穴閉じる
じっと見ている父さんの逃げた穴
せっかくの闇抉じ開けられるアサリ
手応えのあるもの折ってみたき春
戻らぬか抱き上げられる大きさに
でこぼこをなでてあげるからおやすみ