ときどきお取り寄せをするお店で、
「いなり用あげ」というのがあった。
おいなりさんは好きだけど、おあげさんを炊くのがたいへん。
ためしにひとつ買ってみた。
お米をしかけてから封を切った。
するとおあげさんは、どろっとした液体と一緒に出てきた。
まるで黒蜜みたい。
嫌な予感がしてちょっと舐める。
ひーーーあまいっっ!!
仕方なく、黒蜜の中から引き上げて、水で洗ってみる。
うーん、まだ甘い。
今度はお鍋でくつくつ炊いてみる。
お湯がメープルシロップみたいになる。
まだだめだ。
おしゃもじふたつでぎゅうぎゅう絞る。
そしてまた炊いてみる。
ちょっと甘味がましになったので、
お酒と薄口を入れてみる。
なんとかなったかと思っていると、
もうすぐご飯が炊けるのに気がつく。
こんなあつあつのおあげさんに、
ご飯を詰められない。
大きなボールのふちに、引っ掛けて冷ます。
まるで洗濯物みたいだ。
ご飯に合わせ酢とゴマ、味をつけた人参、蓮根。
さあ包もうと思って気がついた。
おあげさんの形が違う。
大阪では寿司あげと言って、
おいなりさん用の正方形のものが売っている。
それを斜めに切って、
三角形の、直角を挟んだ二辺が繋がったものに包む。
ところがこれは長方形。
どう切ってもその形にはならない。
どうしようと包丁を持ったまま、
パズルのように考える。
あちこち向きを変えたり、切込みを入れたりして
なんとか包めそうな四角に切って、
それを三角に包んだ。
帰って来た娘と息子が、
「わーおいなりさん。これ作ったん?」と訊いた。
買ってきたんやけど、作るよりたいへんやってんで。